牛乳・乳製品とカルシウム
骨の健康に不可欠な栄養素であるカルシウムですが、日本人のカルシウム摂取量は不足の傾向にあります。平成17年国民健康・栄養調査結果における成人のカルシウム摂取量は、男性では18~29歳のほぼ90%の者が目安量(習慣的な摂取量がこの値以上の場合、不足している確率は非常に低い値)に達しておらず、男性のその他の年齢区分及び女性においても75%前後の者が目安量に達していません。カルシウムの主要な供給源となっているのが、牛乳・乳製品です。また、牛乳・乳製品は単位あたりのカルシウム含有量が高いだけではなく、その吸収率が他の食品に比べ高いのが特徴です。よって、牛乳・乳製品の適切な摂取が望ましいカルシウム摂取量につながります。
牛乳・乳製品の摂取と骨粗しょう症の予防
成人における牛乳・乳製品の摂取の骨粗鬆症予防の効果について複数の文献を検討した報告により以下の3点が勧告されています。
- 若年成人女性には、来るべき閉経後の骨量減少を小さくするために、できるだけ牛乳・乳製品を摂ることを奨励し、その摂取習慣を閉経後まで継続させる。
- 閉経期から閉経後の女性には、骨量減少をできるだけ小さくするために、少なくとも毎日コップ1杯の牛乳・乳製品をとることを奨励する。
- 高齢期の骨折を減らすため、牛乳・乳製品摂取習慣のない、あるいは極端な低摂取の中高年男女には、毎日コップ1杯以上の牛乳・乳製品を摂取することを推奨する。
牛乳・乳製品のとり方―成人の場合―
食事バランスガイドでは、1日に摂取する牛乳・乳製品の目安として、身体活動レベルが「ふつう」以上の成人女性(高齢者を除く)や身体活動レベルが低めの成人男性の場合、2つ(牛乳だったら1本(200g(約200ml))となっています(図1)。牛乳・乳製品を摂取するには、その量を適量にすることが大切です。
牛乳・乳製品の摂取量が少なすぎるとカルシウム摂取量の不足につながります。牛乳のにおいが気になる場合は、牛乳にコーヒーやココアなどを入れて飲むのも一つの方法です。また、牛乳やスキムミルク(脱脂粉乳)を用いた料理(シチュー、グラタン、ミルク煮、等)で摂取することもできます。一方、乳糖を体質的に分解できずに下痢を起こす乳糖不耐症の場合には、牛乳を温めてから飲む方法、あるいは、市販の乳糖不耐症用の牛乳を利用する方法があります。牛乳の摂取が難しい場合には、ヨーグルトやチーズなどの乳製品によりカルシウム摂取量の不足にならないように気をつけましょう。
一方、牛乳・乳製品を多くとり過ぎるとエネルギーのとり過ぎにつながります。特に肥満が気になる場合には、低脂肪のものを利用するなどの工夫も大切です。
参考文献
- 財団法人 日本公衆衛生協会. 地域保健におけるエビデンスに基づく骨折・骨粗鬆症予防ガイドライン
- 社団法人日本栄養士会 監修 武見ゆかり・吉池信男 編. 「食事バランスガイド」を活用した栄養教育・食事実践マニュアル. 第一出版
- 中村丁次. 栄養食事療法必携 第3版. 医歯薬出版株式会社
コメントする